髭日記

アメブロからのお引越し。

誰もが知ってるSFホラーの名作のお話を今更。

122【エイリアン】(ALIEN)[ブレードランナー][ブラック、レイン]のリドリー・スコット([トップガン]の監督トニー・スコット実弟)監督の'79年SFホラー。このジャンルの金字塔と呼べる作品。原案・脚本は[バタリアン]のダン・オバノン(ちなみに[トータル・リコール]の原案・脚本もこの人)。元々「エイリアン」は『外国人』を意味する単語やけど『異星人』のイメージの方が強いのはこの作品の影響やと思うし、どっちかと言えばぼくも最初は後者で覚えた記憶がある。約半世紀前の作品やけど今観ても色褪せない。やっぱすごい。原点。

淡々と進むストーリーが怖さを助長してるんですよね。これを『退屈』とか言う人はかわいそう。感受性の何かひとつが欠けてらっしゃるんじゃないかと思う(Not煽り)。あの淡々とした経過をよくできた演出やと感じれないのは不憫。暗闇の宇宙にタイトルがゆっくり浮かんで無人の艦内のコンピューターが起動してコールドスリープから目覚めるまで5分以上が台詞もない。キレイやないの。不気味やないの。最近のCG映画でのこのジャンルの作品([プロメテウス][コヴェナント]含め)とかと比べても断トツにいい出来で断トツに怖い。これはその『退屈』と揶揄される演出がもたらした成果やと思う。

まず〈ノストロモ号が貨物船〉ってのがいいじゃないですか。戦艦とか軍用艦じゃないのが。だから乗組員も少ない。そうなんですよ。〈乗組員〉なんですよ。戦闘に特化した兵士とか海兵じゃない。そこもまたいいんですよ。戦艦とかならドンパチの派手さは出るかもしれないけど武器も豊富にあったり戦闘員も多く乗ってたりするから追い詰められる危機感が薄れちゃうし、ピンチになるにはトンデモモンスターを出すか数で押すかになりがちで[2]みたいなアクション活劇風味になっちゃう(十分トンデモモンスターやけど)。民間船なので武器も必要最低限しかない。艦内も狭いから限られた空間での設定も怖さに拍車をかかる。全部〈貨物船〉だから1本の線で繋がるんですよ(これは[3]の設定〈囚人惑星〉にも近いものがあると思ってる)。リプリーが〈航海士〉という肩書きなのもいいですよね。〈通信担当〉なのも。ともすれば地味な階級じゃないですか。艦長とかリーダーとかの「いかにも」なポジションじゃない。3番目なんですよ(船長→ケイン→リプリー)。でもその役割での働きが謎の信号を解析するという自然な流れになる。今作では終始「主人公、主人公」としての描写は控えられてる。〈主人公〉として描かれてるのは[2]からなんですよね。そしてその後[ターミネーター]のサラと並んで闘うヒロインとしてのシンボル的なキャラになる。事実、今作ではクレジットで名前が出てくるのはダラス船長役のトム・スケリットの次なんで2番目なんですよ。ちなみにトム・スケリットは(古い方の)[トップガン]('86)の教官ヴァイパー(所謂トップガンのボスにあたるヒゲの人)を演じた人。正直、面影ないです。あと、記念すべき(?)人類史上最初の犠牲者になるケイン役のジョン・ハートは名作[エレファント・マン]で主演をやってるってのを初めて知った。

今観ると機関士のブレットがジョーンズ(猫)の目の前で襲われたシーンのすぐその後がみんなが集まる場面で「デカくなってたぜ」(パーカー)ていう繋がりがおかしい。なんか大事なシークエンスをガッツリ切ってるな(調べたら〈ディレクターズカット盤〉にはパーカーたちがブレットの最期に駆け寄るシーンがあるらしい)。あの編集ではブレットは即死として受け取られかねないので(だって攫って繭床にするなんてあの段階で知る由もないやん)ランバートの「ブレットは?助からない?」ていう台詞も宙に浮いちゃうしリプリーの「ダメだと思うわ」も『?』になっちゃうよ。攫われて繭にされてるっていう裏設定があるのならそこも観せないと。ちなみにリプリーの〈エレン〉というファーストネームは[2](完全版)の終盤でのヒックスとの会話でハッキリとわかるまでは特に今作でもフォーカスされてません。ラストの報告も『リプリー』で締め括ってるしエンドクレジットも『Ripley』だけ。

よくよく考えたらほぼ半世紀前の映画となるとぼくらがガキの頃(いや、もっと前か)のサイレント映画チャップリンバスター・キートンと同じ感覚で若い人は観てるのかな。それならそれでこの作品が「古典」と言われるのも納得やし更に偉大に感じるしそれ以上に時の流れを痛感してちょっと怖くなっちゃう。

今作と[遊星からの物体X]はSFホラーのマスターピースツートップやと思ってます。個人的には後者の方が好きですけど。粗や年代的な古さとかは気にならない、そんな完成度の作品ですね。遺産ですよ、映画史の。ぼくは当時、先に次作の[エイリアン2]を観たんですよね。その後で今作を知って観た。初見の驚愕は越えなくても今観ても全く色褪せない名作。

冒頭の20thCenturyFoxのロゴが画も音も古くて『さすが'79年…』てなります。


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勝96

分19

負7