髭日記

アメブロからのお引越し。

結構けちょんけちょんに酷評されてるけどホントはおもしろいよっていう続編のお話。最後に書いた疑問については知ってる方がいらしたら真剣に教えて欲しいです。

124【エイリアン3】'92年のデヴィッド・フィンチャー監督作品([セブン][ファイト・クラブ]の監督で本作が長編映画デビューだとか)。シリーズ3作目。1作目と2作目に比べて酷評されがちな作品ですね。WOWOWで放送されてた「完全版」を(完全版は'04年公開でオリジナルより30分ほど長い)。完全版ははじめまして。憶えてたエンディングと違った。

ターミネーター]と一緒で1作目と2作目が偉大すぎたんですよ。単体で観るとスケールダウンは否めないけど普通におもしろいですよ。リプリーの最後のケジメの付け方も個人的には好きです。あの『あーあぁぁぁぁ』という最後の一口に苦いモノを食べさせられたかのような決してポジティブではない余韻は後々[セブン]や[ファイト・クラブ]を撮る人の感性やなぁと。ただ、[T2]('91)のすぐ後にアレやっちゃったらアレコレ言われますわ。タイミングが悪い。いや、違うな。アレはどのタイミングでやってもアレコレ言われるからタイミングの問題ではないな。あのくだりは[T2]のパテントみたいなとこあるから。

今作を〈駄作〉とは思いません。なんなら良作じゃないかと思う。ただ《エイリアン》の冠をつける作品の重責や1作目・2作目の偉大さに比較されてしまって妥当な評価を受けきれてないんじゃないかなと。減点ポイントはいくつかありますよ。CGの粗さとかキャラの区別がしにくいとか。なにより『フェイスハガーの胚からチェストバスターになるまでの時間』で大きなラグを生むという大チョンボをしちゃってる。これはちょっとやそっとじゃフォローできないですよ(『クイーンだから他のチェストバスターより時間がかかるんじゃねぇの?』というのが精一杯のフォロー)。あと、リプリーをあの状態にするという暗黙の了解でのアンタッチャブルな不文律を破っちゃった。これは受け取る人によっては『ジョン・コナーを◯◯に…』という[T5(ジェニシス)]レベルの蛮行に捉えられても仕方ない。ぼく個人的には『おぉ!よくやったな』とおもしろかったですけどね。ぼくは好きです、このアイデア

他にも褒めれるところもあって、「囚人のみの惑星」「四足歩行のエイリアン」はとてもいいプロットやと思います。〈囚人しかいない〉からリプリーが孤立したし、今作のある意味トレードマークになった坊主頭になり、武器を持たされていないという流れが自然に成立してる。〈四足歩行のエイリアン〉だから建物内の迷路のような通路を駆けずり回る際に天井や壁を走れたり、クライマックスの鬼ごっこに緊迫感を生んでる。過去の〈ビッグチャップ〉や〈ウォリーアー〉ならあのスピード感は出なかったでしょ。〈フェイスハガー〉や〈チェストバスター〉ならすばしっこいけどそんな鬼ごっこならそこまで怖くないし(怖いけど)。ね、ちゃんと筋は通ってるんですよ。

ただ、〈囚人〉を素材にしてみんな坊主にしちゃったから誰が誰だかほとんどわかんない。普通のシーンでも区別つきにくいので走り回られたら更にわかんない。せっかく〈囚人〉という設定があるのなら、わかりやすい部位に囚人番号的な目印になる数字をつける(ワッペンなり刺青なり)とか、身体に管理チップのようなものを埋め込まれてそれがモニターでわかって誰がどこにいてどう逃げているのかわかりやすく描写したりしてもよかったんじゃないかなと思う。せっかく〈バーコード〉というもってこいのプロットがあったのに。まぁ〈誰がどこで被害に遭ってるのかわからない「恐怖」〉が演出のひとつだったのならアレコレ言いませんが(言いたいけど)。それか、もっと見た目でキャラを区別するなり配役に違い(年齢的なモノであったりキャストの国籍的なモノとか)をわかりやすく表現できてたらなぁと。文句ついでに言わせてもらうならリプリーとクレメンス(医師)が心を通わすのは会話だけでよかったでしょ。身体まで重ねる必要性はなかったよ。要らないと思う。絶対。リプリーが安っぽい女に堕ちちゃう。あと、最後に出てくるのはビショップじゃなくてアッシュの方がよかったんじゃないかなぁとぼくは思う(後述でちょっとフォローしますが)。リプリーと対する立場なら絶対にアッシュの方が感情移入はしやすいしリプリーの悲壮感みたいなのは際立ってたはず。「安堵」から「絶望」への転落を劇的に描きたかったのかもしれないし、交渉の言葉にリプリーが(一時的とはいえ)耳を貸す展開ならビショップの方がしっくりくるのかもしれんけど(アッシュなら聞く耳持たずに頭ごなしに否定するでしょうね)。でもやっぱアッシュでも成立するしアッシュの方がしっくりきたなぁ、うん。

ずっと今作は〈宗教色〉が濃い印象を持ってました。フューリーが戒律で規律が保たれてたのはかろうじてぼんやり憶えてたから。今回観直すまでは。実際は案外そーじゃなかった。もっとそれが色濃い印象があるのは次の[4]。ちょっと苦手な感じの印象。監督がフランス人やからかしら(偏見)。1作目と2作目はちょくちょく観直すんですよね。好きだし。特に[2]なんて。何回観たことか。でも今作以降はほとんど観直さなかった。円盤も持ってない。おもしろいとは思うけど「華」がないというか。観たくなる惹き寄せる〈何か〉がぼくにはあまり感じられない気がして一回観たらもうしばらく観なくていいかな…て感じてた。でも今回改めて久し振りに[3]を観てみて記憶の中の評価よりおもしろかったのでまた観直しそうです。

冒頭で前作のキーパーソンをしれっと退場させた事を「悪手」って言う人いますけど、そりゃ別の監督が作るのなら一回リセットしたくなる気持ちもわかるので何とも思わないですね。それは[ニュー・フェイト]のジョンの扱いとはワケが違う。それに何よりあの〈囚人の惑星〉という舞台設定ではあの2人は邪魔になってたんじゃないかなとも思うからなんなら大英断ではないかとすら思える。[2]の余韻みたいなものをぶった斬ったというか。娘である"彼女"とリプリーの最期が《溶鉱炉》で同じなのはせめてもの手向けのような気がぼくはした。そもそも根底の世界観やど真ん中の背骨の柱、基本になるビジョンをイヂらなけりゃあとはリリーフした監督の権限でしょとも思うし(ただし、SWepⅧのライアン・ジョンソン、お前はダメだ。許さない)、うん、あの2人はあの設定でやるなら要らなかったよ。ニュートを護る作品にしたら[2]の焼き回しやしね。施設の中だけを舞台にしたのは1作目のノストロモ号のような閉鎖空間を上手く使ったいいアイデアやと思うけど、鬼ごっこするには広過ぎとちゃうの?という間延び感はちょっとありました。あと今作は衣装デザインがカッコイイ。シリーズで1番カッコイイんじゃないかと思う。ちなみに、成体の呼称を『ゼノモーフ(xenomorph)』って呼んだのはこの作品からなんですね。リプリーが本社(W・ユタニ社)とメールのやり取りする時がおそらく初出。観直して気づいた(確認してみたら[1]でのマザーとのやり取りでは『ALIEN』となってた)。中盤でゴリックがやらかして閉じ込めてたヤツを放ってしまうシーンは完全版だけらしいけど、オリジナルはこの一連の流れがなけりゃどうやってたんやろう。上手く繋がってたのかしら。全然記憶にない。

『今作からシリーズが迷走し始めた』みたいな意見もあるけど、『いやいや迷走させたのは[エイリアンvsプレデター]じゃねえのかよ』ってずっと思ってる(観てないけど)。

今作は前作のハードルが高過ぎてキレイに飛び越えれずに着地が期待されたほど上手くできなかったけどプレー自体は失格じゃないよ…って感じ。もし可能なら次作の[4]を観てからもっかい今作を観てみて下さい。評価変わります。この作品がいかに〈まだマシ〉なのか、わかると思います。


最後にひとつ疑問を。冒頭でひとつのエッグチェンバーが映り1匹のフェイスハガーが活動してた([2]のエンドロール後の脚音はこの個体なんでしょう)。自然な流れならそれがリプリーに…ですけど、それならフューリーに不時着した後に活動したフェイスハガーは?同じ1匹?そんなわけない。だってリプリーの胚はクイーンですもん。牛(通常版の犬)の胚は違うでしょ。そもそも一度産卵したらタヒぬ設定でしょ?そーなるとスコラ号及び脱出艇には2個のエッグチェンバーがあった事になるしクイーン胚じゃない方のフェイスハガーも存在していなくてはならない。

そしてそこからもうひとつの疑問が。誰がそこにエッグチェンバーを置いた?[2]のクライマックスの隠れてたタイミングでクイーンが産卵した?産卵管抜いてたのに?胎内に残ってた卵?そこで浮かび上がるのがリプリーがニュートを救いに行ってた時に会社の命令で持ち出していたビショップが置いた説。そんなザワッとする考察もあるそうです。[2]のラストのビショップや今作でのリプリーとのやり取りからすると『まさか』という考察ですけど(にわかに裏切ってるとは思えない)、今作で少しだけ復活した際に意味深な事を言ったり"前述"の最後に登場させるキャスティングにはコレなら納得はいくんですよ。そして、この2つの説が同時に成立するなら〈2匹のフェイスハガー〉にも〈"クイーンが産んだ"クイーン胚と"盗み出した"通常胚という2種の点〉にも筋が通るんですよね。この件に関しては識者の方に教えてもらいたいです。ホントに。

 


○(十分に○の評価できます)

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勝98

分19

負7