髭日記

アメブロからのお引越し。

〜無双父と私のアパッシオナート〜のお話。

121【96時間】(原題:Taken)BS-12で放送してたので久し振りに。主演のリーアム・ニーソンの声が好きなので字幕版で。'08年の仏・米合作の自警団アクションスリラー映画。所謂「ヴィジランテ・ムービーです。[イコライザー]の時に書きましたけど同じジャンルですね。そこにサスペンス味が上手く足されてる。秀作です。リュック・ベッソンが合同脚本で携わってて監督はピエール・モレル。リュック・ベッソンは[トランスポーター]もそうやけど良い素材というか良いアイデアを生みますね。続編とかの育て方があまり上手くない…とまでは言わないけど〈1作目〉のプロットは他と違う角度のおもしろさはあるんじゃないかな(まぁ両方とも"共同"脚本ですけど)。原題の[Taken]は「奪われた=攫われた」という意味でいいと思います。邦題は劇中の会話で出てきた「誘拐事件の被害者が無事でいられると考えられる猶予期間」から。珍しく原題に負けないくらいのなかなかセンスいい秀逸な邦題ですね。リーアムさんの出世作であり代表作と言っていいと思います。おもしろいですよ。円盤も(シリーズ3作)持ってる。

冒頭の誕生日会とボディーガードの仕事でブライアンの自己紹介がちゃんとできてるからスムーズに入り込める。プレゼントを自分で梱包するシーンとか普通なら要らないですよね。でもその数秒のシーンがあるからこの人が意固地なキャラってのがよりよく描写されてる。いいシーンですね。車に避難してきて動揺してるシーラに飲み物で糖分を補給させるシーンとか細かくてリアルで好きでした。肩の抱き方がぎこちないのもいい。

娘が攫われる断末魔の叫び声を聴かされるとか地獄でしかないですよね。耐えられない。そもそも電話越しの娘に『お前も攫われる』なんて言わなきゃならないのもエグい。ただ、その電話に出た相手に投降の選択肢を与えながらも追い詰める言葉を出せる(『◯す』まで言うてますからね)のがすごい。普通は媚びますよ。刺激しないように。この父親は違う。強く言える自信があるから。完全に相手の方が有利な立場でともすれば後手に回るのに。なんなら脅迫される側やのに。主導権を渡さない。強過ぎる。手に職(言い方下手か)あると自信が違いますわ。実際、CIAの元工作員としての経験やスキルで無駄なく追い詰めていく流れは痛快で観ていておもしろいしある意味この作品の魅せ場。ただ、最後に『こいつがマルコだ』っていう決定的な振りがあともうひとつ欲しかったかなとは思いますね。あの台詞が決定的な確信なんでしょうがあそこであの紙を渡す対象を絞り込むあとひとつが。「ヒゲ」や「タトゥー」ではちょっと選択肢が絞りきれてないような気がするんです。そんな人間ばっかりやし(そう見える)。そこでアレでは〈絞りきれた〉描写が足りない(わかりにくい)かな、と。「どこかに大きな傷がある」とかを足しても良かった気はする。それか順番に読ませて最後に『こいつか!』てなるか。あと、このブライアンのスキルが更に遺憾無く発揮されるのは続編の[96時間/リベンジ]です。自身が攫われた時に道中で場所の目印を把握してそれを頼りに追跡するシーン。これは更に見事。名シーン。痺れる。シリーズ通しての屈指のシーンです。

意外とも言えるけど、作中で娘さんは一切「馬鹿」には描かれてないんですよね。浮かれてるだけで。確かに父親に対しての反抗期っぽい描写(まぁ親父の厳しさに辟易してるだけなんでしょうが)はあっても友達がちょっと奔放なだけでキムはそれに振り回されてるだけ、と。だから自業自得の問題を起こすトラブルメーカーじゃないから観ててイライラしないし感情移入もできる。この辺は上手い。ちゃんとあの緊急時でも父の言う通りに情報を伝えたし、続編でもしっかりとアシストする有能さを見せて「さすがこの父親の娘」と思えます。

脚本とプロットがいいんですよね。素晴らしくいい。話の流れが破綻してない。とてもいい脚本。絶妙にリアルさも残してる。テンポもいい。ちゃんとハラハラさせる。悪漢に容赦ない仕打ちするのも観てて爽快。あと、伏線の張り方というか繋げ方が上手い。個人的には名刺の使い方(これは続編でまたおもしろい使われ方します)がすごく好きやったし、ボディーガードの仕事のくだりをエンディングでとても巧く使ってる。いいエンディングです。

リーアムさんの体術や銃の使い方がすごくリアルに見えるんですよね。そこそこの高齢(今作時点で56歳)なのでちょっとモッサリしたり走る速さとかはまぁどうしようもないとしても、身体が大きい(190㌢over)ってのもあると思うけどすごく強そうなんですよ。どこぞの部隊にいた経験があるのかと思っちゃうくらい(ボクシング経験者らしい)。〈魅せるアクション〉じゃないんですよ。やたら飛んだり跳ねたりしない。そんな歳じゃないしそれはそれができる人に任せればいい。ただ、この人のアクションはちゃんと対象者を〈護れるアクション〉なんですよね。だから派手さはないけど無駄がなく強く見える。

続編もおもしろいですよ。お薦めできます(3作目はちょっとばかりグレードダウンしますけど)。


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勝95

分19

負7

ちょっといつもと毛色が違うけどとても良かった作品のお話

120【マダム・イン・ニューヨーク】(初)/ここで扱うには珍しいジャンルの映画。自分でもちょっとビックリしてる。'12年の作品で初めて観るインド映画。たまたまWOWOWにチャンネルが合っててぼんやり観てたら『あ、いい映画やん』て思って改めて観直した。何より惹き寄せられたのは主演の女優さんがとてもキュートな事。そりゃ好きになるわ。かわいいもん。一目惚れみたいなもんです。ぼくの中では"インド映画"はいきなりストーリー関係なく盛大に踊り出したり二度見するような雑な特撮(言い方)ってイメージやったけど、この映画は普通(普通とは)です。所謂《ボリウッド》とはちょっと違う。歌は流れるけどBGMや挿入歌の延長みたいでそんなに邪魔にならない。ちょっと曲調にクセはあるけど。ちなみに原題は[English Vinglish]で、「Vinglish」は韻を踏むための造語で意味はないそうです。

変に恋愛にオチを持っていかなかったのがすごく好き。劇中でシャシの『恋はいらないの。欲しいのは尊敬』って台詞が本筋なのがいい。まぁお国柄的に不貞ネタの映画は作らないのかしら。知らんけど。

登場人物もハートフルコメディーだけあってみなさんとてもハートフル(語彙力どこいった)。まず飛行機の席で隣り合わせた男性が粋。到着してからのあの最後に背中を押して送り出してくれる心遣いはたまらなかったです。『英語喋れないのに?』という同僚に一言添える男性とかもいい感じにほっこりさせてくれる。カフェでのシークエンスは観てて胸が痛くなりますね。シャシの表情がそのまんま観てる側の心境に伝わってくるから不安そうにしてるとこちらも不安になるし泣いちゃうとこっちも釣られちゃう。シャシの表情の演技がそうさせるんでしょう(惚れてるから甘い)。何気ない地下鉄の駅員さんとの距離感もいい感じのエッセンスになってて観てて癒される。そして英会話の先生のキャラがとてもいい(最初は絆を深めるのは電話に出た女性やと思ってたけど違った)。初見では『強い、強い』と思って引きかけたけど話が進むと気にならなくなって最後にはいい感じに仕上がってる。他の仲間たちもいい感じのクセの塩梅で邪魔をしてくるわけでもなくクラスの雰囲気が良い事をしっかり伝えてくれる。一歩間違えばストーカーになりかねないローランも安っぽいトレンディードラマのちょいキモキャラになりかねないところでヒンディー語をコッソリ勉強してるという粋な事するから憎めなくなっちゃう。何がいいって"勉強してた事を明かさなかった"ローランとそれに気づいても"言葉にせずに笑顔を浮かべただけ"のシャシ。特にシャシがいい。去り際の表情がちょっと嬉しそう。それを大写しにしないセンスも好き。

正直、普通にタイトルだけを見てたり作品リストにあっても観ようと選ばない作品です。実際、何回か番組表で見かけてたけど観てなかったし。前述のイメージがあってインド映画は選ばないジャンルだったし(他のヒットしたらしいインド映画も観たことないし)加えて〈恋愛映画〉とか〈ハートフルコメディ〉ってよっぽどの「惹き」がないとチョイスしない人なんで。"大好きな人が出てる"とか"大好きな監督が作った"とか(「好き」程度なら惹きとして弱い)。だからこの作品を観たのはたまたまが重なった。たまたま放送してたのをたまたま休みの日に観た。観たらたまたまおもしろかった。でも観てよかった作品です。

 

 

シャシを演じた主演のシュリデヴィカプールさん、とても綺麗でとてもキュートで表情や仕草が作品の質を上げてると思います。彼女の演技が"たまたま観てた"を"ちゃんと観直した"に変えた1番大きな理由です。惚れちゃいましたね。ただ、残念な事に’18年にお亡くなりになられてるそうで。今作の時の年齢が49歳。全然見えない。びっくりした。この作品で評価をされてもっと他の作品やメジャーな作品で観てみたいと思わされる女優さんなのでとても寂しく思います。もっと観たかった。彼女の代表作にあたるであろうこの映画に出会えてよかったし、とても良い作品でした。好きです。お薦めできる作品です。

के बारे में सुनकर बडा दुख है.


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勝94

分19

負7

ホントは他の作品を投下しようと思って下書きにまとめてたんですけどちょっとおもしろくてガーーーッと書いちゃった作品のお話。

119【BLUE GIANT】(初)/WOWOWにて。'23の作品。映画館で何回か予告編流れてました。原作未読で予告編を観たことがあるくらいの情報量で観たんですが…。ドエライ作品でした。劇場で観たかった。TV画面で観てもおもしろかった。でも劇場で…というか極上の音響環境で観たら何倍、何十倍もおもしろいと思うし、なんならそれがこの作品の本来の完成形なんじゃないかなとすら思った。劇場で観る事ができた人をちょっと羨ましくも思っちゃう。

かなり話題になってた作品ですけど、『そりゃ話題になるわ』て作品でした。聴いてるだけでも気持ちいいです。サントラ欲しくなりますね。オリジナルのスコアもカッケェんですよ。昔にほんの少しJAZZとかも聴いたりしてたんで音楽がとても心地よく聴けました。JAZZってもっとこうムーディーでおしゃれな雰囲気というか…カウンターでお酒を飲みつつ煙草を嗜みながら…みたいなイメージがあったんですけど、こんな〈主人公〉になる要素もあったんですね。音楽に対する素質や知識、経験、悟性がないもんで受け取れるセンスが乏しいのが残念ですけどそれでも十分におもしろかった。カッコイイんですよ。ともすれば陳腐な言い回しになるかもしれない『音が見える』という表現に限りなく近い熱量のある音を浴びる2時間。

ストーリーはなかなかスポ根ライクな熱いお話。2時間の尺に納めるのにだいぶ端折られたりしてるんじゃないかと思うしかなりエンタメに脚色されてるんじゃないかしら(原作読んでないから想像で書いてます)。でもそれがドラマチックでいい。あくまでも主役は〈JAZZ〉であり〈音〉だと思う作品なのでストーリーやキャラに求めすぎる必要はないと思ったりもしますけど、これがなかなかいい感じに盛り上げてくれる。泣いちゃいますよ。あと、出てくる人に悪人がいないんですよね。粋な人ばかり。天沼さんが最初ちょっと憎まれ役なだけで。『君の成長するドラムを聴きにきているんだ』の豆腐屋の金田さん(竹中直人さんのイメージで観てました)の台詞が1番グッときた(泣いた)けど、『10%』の赤鼻のサラリーマンもガッツリ心を奪いましたね。クライマックスのSO BLUEにも聴きに来てて嬉しくなりました。鼻っ柱をへし折られた雪祈が『そこまで言うか』の後に『そこまで言ってくれるか』と付け足すのがイイ。一言目だけなら腐って挫折に向かうのかもしれないけど二言目を言葉にできるというのは雪祈はちゃんと平さんの言葉の真意をわかってるって描写やと思うし、そこからの成長がたまらない。最初の頃の雪祈なら1人だけ誘われたとしても2人に断りを入れずに代理を受けてたと思うんですよね。なにかしらの理由や屁理屈をつけて。でもそれをちゃんと2人に先に打ち明けた。そしてそれを快く背中を押す2人。イイ。そのステージで自分の殻を自分で打ち破った雪祈。イイ。そしてクライマックスへ。

上京して演奏場所を探してる時のオープニングクレジットがとてもセンス良かった。なんか海外の映画みたい。冒頭の降り積もる雪の描写がとてもキレイでしたね。[スラダン]の雪の描写がすごくキレイでリアルでとても好きなんですけど、あっちは〈神奈川〉の雪でこっちは〈宮城〉の雪でちょっと違う。冬の雪国の雪でした。全編を通して汗や飛沫や涙の描写がちょっとtoo muchというか少し古臭いというかアレな部分はありましたけど。あの表現がなくても(抑えてても)十分に熱量や盛り上がりは描けてたと思いますけどね(CG云々よりもこっちの方が気になった)。まぁ正直、作画は某駿先生のトコや某前前前世シリーズの制作会社には追いついてないと思う。けど負けないくらいの作品に音楽が押し上げてる。

ぼくの中での好きなアニメ映画は[カリオストロの城]と[THE FIRST SLUMDUNK]がぶっちぎりで[風の谷のナウシカ]を加えた3作品がベスト3じゃないかなと思っていて、[逆襲のシャア][天空の城 ラピュタ][紅の豚][もののけ姫]と続くんですけどそれに匹敵するくらいおもしろかったですね。

ただひとつだけどうも腑に落ちないというか疑問に思う事がある。なぜ〈声優〉を使わなかったのか。あの3人の声に不快感や抵抗があるわけでもないし文句があるわけでもない。キャスティングとして失敗してるとか全然思わないし当然炎上なんかもしないでしょう。普通に観れますよ。成立してる。悪口じゃないです。個人的な感覚の問題で作品にも演じた3人にも非はないと思います。でも、ぼく個人としては〈声優〉が演じるJASSの3人ならもっと世界観に没入できたんじゃないかなとは思いましたね。「不快感」や「抵抗」はなかったけどほんの些細な「違和感」はあったので。ただ、そんなのを帳消しにするくらい音楽が良かった。

惹きつけるようなファンタジー要素や派手なエンタメ要素を一切入れず《JAZZ》を題材にして《音》が主役の物語を映像で魅せるってすごい事やと思います。観ながら〈聴く〉映画。それをとんでもない高いレベルで成立させる日本のアニメーションってホントにすごいと思わされました(CGの部分はまぁ敢えて触れません)。正直、あまり期待しなくて「話題作」という偏った印象だけで観たんですけど、とんでもなくおもしろかったです。たぶん今年('24)に観た映画たちを振り返った時に名前が出るくらいの作品です。観てもらえるかどうかは別にして薦めたい作品ですね。


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勝93

分19

負7

賛否両論の"否"の話をしながら絶賛するという支離滅裂な感想のお話

118【ターミネーター:ニュー・フェイト】(原題 Terminator: Dark Fate)(初)/'19年の[T2]('91)の純粋な続編。所謂《正史》。なんせ1作目の[ターミネーター]と2作目の[T2]を監督したジェームズ・キャメロンが製作に携わってる(3〜5は「原作・キャラクター創造」のみ)。時間軸は[3]('03)、[4]('09)、[新起動/ジェニシス]('15)、TVドラマの[サラ・コナー クロニクルズ]('08)とかは別ということになってるらしい。シリーズ第6作目(ドラマ[SCC]はノーカンとして)にあたる作品で監督は[デッドプール]('16)を撮ったティム・ミラー。今回アマプラで観たんやけど20世紀FOXがディズニーの魔の手に堕ちた(買収されただけです)のでアマプラで観るのは半ば諦めてたし観れるとは思ってなかった。タイトルってなんでオリジナルそのまんま使わなかったんやろうか。『〈ダーク〉やとイメージ暗い』とか作品関係ないところで作品関係ない人が作品関係ない会議して決めたんかな。センスないわ。

おそらくこの作品に集まる賛否両論の"否"の部分の大半を占めてるポイントを予想してみます。《ジョンの扱い》なんじゃないでしょうか。ダメでしょ。早々にあんな退場させちゃ。そりゃ納得しませんよ、ほとんどの人は。あくまでもターミネーター世界線では〈ヒーロー=ジョン・コナー〉であって希望であり光なんです(あくまでも〈英雄〉という話で〈主人公〉を論じてるワケではない)。その役割はT-800なんかじゃないんですよ。[3]で腑抜けに描くという悪手を打って期待を裏切って挙げ句の果てに[新起動]では敵に回るという最悪手を打った。だから「駄作」とか言われるんですよ。(その点、世間では全体的な評価が低い[4]ではジョンは指導者ではなく兵士として描かれてはいるけどちゃんと〈ヒーロー〉であり希望だった。だからぼくは[4]が好きなんです)。ただ、今回のあのジョンへの仕打ちがキャメロンの目の届かない場所ではなく〈製作〉下で行われた事が〈救い〉なのか逆に〈無慈悲〉なのか。どこの誰だかわからない監督にキャメロン関係ないトコロで同じ事をされたらたぶん倍以上にキレ散らかすと思う。監督のティム・ミラー曰く『サラの悲劇性を引き立てる起爆剤』があのジョンの扱いなんだと。わからんでもない。いや、なんならわかる。でも《正史の続編》を謳った作品で前作([T2])で皆が命を懸けて守った希望を蔑ろにしてしまった。それも冒頭で。[ターミネーター]シリーズの主役はジョン・コナーじゃないのはなんとなくわかってます。主役はサラであって同じくらい"ターミネーター"なんでしょうよ。カイルもジョンもあくまでも〈主役〉ではないと思う。ただ、物語や世界線を構築するにあたって欠けちゃいけないピースなのよ。確かにエドワード・ファーロングのキャスティングがネックだったり使い物にならなかったり(言い方)と難問はあったとは思いますがね。加えて中年のジョンを登場させるというのもリスクは伴う。きっとみんなの〈ジョン〉は[T2]の時のファーロング像なんでしょうから。別の俳優に演じさせるなりしてもおそらくそこに《否》は集中したでしょうよ。そことの天秤に掛けた結果があの扱いに落ち着いた苦肉の策なのかもしれませんし、「フェードアウトさせるならあのジョンの姿のままで」というキャメロンの親心に近しい思い入れみたいなのがあったのかもしれない(逆にそうであって欲しいとも思う)。冒頭で観ている人の期待や想像を裏切る事には成功したと思うしあれ以上のやり方はたぶんない。でも、それでも《悪手》とまでは言わなくても《良手》だとは思わない…のがほとんどの人の”否"の原因かと。ぼくも最初はそう思いました。でも最後まで観たら少し変わった。実は"上手い"んですよ(後で理由書きます)。

まぁ脚本はぶっちゃけると限りなく微妙ではありました。劇的に魅せる展開ではありましたけど、やってる内容はほぼ[T2]でしたし。そこもおそらく同じくらいの"否"が集まるポイントでしょうね。言いたい事はわかります。悪く言えば「焼き回し」。ただこの《トレース》がキャメロンが続編としてやりたかった事(作らせたかった事)、[T2]を超えなくても大事に思ってる事(もちろん超える気満々で作ったんでしょうが)なんじゃないかな、と。敢えて大舵を切らなかった(ポジティブに変換してます)。そこを考えた上で観ると単なる"焼き回し"なんかじゃないよね、と。SW愛が溢れてるJ.J.エイブラムスがep.Ⅶをほぼep.Ⅳのトレースにしたのを受け入れた人間からしたらまぁわからんでもない。そう思った理由を書きます。〈スカイネット〉を筋から外して〈リージョン〉に置き換えた事で同じ理由で抹殺指令が出てもターゲットがサラではなくダニーになるというタイムラインをもうひとつ作ったのは意味がわかると秀逸なんですよ。強引ですけどね。とても上手い。相手がスカイネットなら延々とサラが狙われてたと解釈していいと思う。それに、そのタイムラインならジョンの存在は不要になる。ジョンはリージョンに関与しないから。そこは辻褄は合う。”上手い"でしょ。あと、スカイネットが存在しない未来ならT-800を束縛するモノもターミネーターとしてのアイデンティティーもなくなる。自由になるし自由にできる。それも辻褄が合う。上手いでしょ。ただそのタイムラインの乱立をやっちゃうと次から次へと新しく次の〈ジョン〉が生まれてキリがなくなっちゃうという畏怖とこのパターンが初見じゃないからどうしても展開の読めないワクワクさは減っちゃう。それはシリーズ物なら仕方ないと言えば仕方ないけど。だからなのか転送されてきた瞬間に〈善〉か〈悪〉の予想がついちゃう。そこはなんかひと工夫してくれないと。でも、シリーズ初見で観た人はワクワクしたんじゃないかな。だって展開がおもしろいもん。未来から機械が殺しにやってくるなんて。設定がもうおもしろいですやん。[T1]、[T2]でワクワクしましたやん。

作品自体は個人的には好きですよ。アクションやドンパチが好きですし。シリーズ前作([ターミネーター:新起動/ジェニシス])に比べたらずっとおもしろい。ずっと。映像も観応えあるし魅せ場がテンポ良く続くのもいい。何回も観れると思う。でもこのシリーズはそれだけじゃないでしょ…という気持ちもある。勝手にハードルが上がってるというか。もっと求めるモノが大きいんですよね。シリーズの襷([T1]、[T2]の襷)を受け繋いでるから。ただのドンパチド派手エンタメアクションなら他の作品で十分観れるんです。せっかくのこのシリーズの世界感やこのシリーズ独特のプロットがあるのにそれを上手く使いこなせてない気がして歯痒い。なんやかんや言うても[3]、[ジェネシス]よりはよっぽど上手くできてるけど。まぁシナリオ的にはどうしてもデジャヴは生じますわな(変則的な事をした[T4]はそれはそれで叩かれるし)。あと『続編』という謳い文句が呪縛になってる気もする。純粋な『続編』というより少し『リブート』も混ざっちゃってるかな、と。だから融通の効かない人が『続編?』とそこを突くんですよね。[3]以降の作品のストレスも重なって。期待され過ぎちゃって。完成し過ぎてたんですよ。[T1]と[T2]が。

シリーズを追っかけてるファンにはニヤリとするシーンがサービスで何個かありましたね。ドアタマがあのサラの録画データから始まるのはよかった。否が応でもテンション上がる(その流れで『ジョン!ジョン?』やから尚更『はぁ?』になるというリバウンド)。サラを助けようと無茶をしたダニーがグレイスに嗜められるのも[T2]の精神病院から逃げ出した車中でサラに叱られたジョンのトレース。あと、カールが犬に懐かれてる設定も知ってれば彼の変化を納得できる描写。 上手く使ってる。Rev9の無機質さも上手く演じて表現できてると思います。ただ、[T2]のT1000(ロバート・パトリック)の”完全な無機質”が如何にすごく如何に完成されてたかが改めてわかる。あと、グレイス(マッケンジー・デイヴィス)がいい。キャラとしても素材としても。十分に加点の材料です。ぼく個人としては。〈ショートヘア+デカイ+強い〉。とても癖をくすぐりまくる女性キャラですね。ぼく個人としては。たまんないです。ぼく個人としては。初っ端のショットガン鬼連射から魅せてくれる。頭を撃って動きを止めてそのまんま勢いで全弾撃ち込むのではなくて3発目くらいで銃を弾き飛ばして相手を無効化して残りを撃ち込んでるのも細かくて好き。あの3発目があるのとないのとでグレースの戦闘能力が付け焼き刃じゃない事がわかる。一瞬のシーンだけどとても上手い描写やと思う。

サラをリンダ・ハミルトンで復活させたのはぼくはファインプレーやと思ってる。ここにも"否"はあるんでしょうけどね。ぼくは全然"否"だと思わない。〈世捨て人〉みたいでイリーガルな雰囲気、カッコイイと思いましたよ。実際に歳を重ねたハミルトンが演じる意味は大きいと思う。事実、いい歳の取り方をしてござると思うし。まぁでも他の役がやりにくいでしょうね。ただでさえサラ役の印象が強かったのに今作のサラ復帰でそれに拍車をかけた。それだけの名刺役があるのは幸せな事なんでしょうけど。[T1]のレストランのウェイトレスが28歳(実年齢)(役は大学生)、[T2]の女戦士が35歳(役設定は29歳)で今作が63歳。ひとりの女優さんの生涯を見せてもらってると言うと少し大袈裟かな。

T-800に関しては…ねぇ…。[T2]の時にも書いたけど、あの《サムズアップ》が好きじゃない(感動はしますよ。でも好きか嫌いかは別)ので今作の"人間らしさ"もなんか蛇足感というか。作品に溶け込ませる為にあの設定なんでしょうけど。でも今回も"人間らしさ"を学習した彼はある意味トレードマークだったサングラスをしない(正しくは、ドアタマのグアテマラのシーンではしてます。この時は殺人マシーンなので)。この〈する/しない〉の描写のワケ方は[T2]からちゃんと繋がってる。そこはよかった。あと、カールがグレースにメールを送った理由を問われて答えた時のサラの『That's "HOW", not "WHY".』(字幕では)『それは現象。理由じゃない』って台詞が教科書に載ってない活きた英語っぽくてすごく好きでしたね。

サラもT-800もおそらく今作が最後なんじゃないでしょうかね(そもそもこのシリーズが今作で最後になるという危惧も)。シリーズ作品はこの先いくらでも作れるでしょうけどね。作ろうと思えば。だって前述した”新しいタイムライン"を作れば護るべき〈ジョン〉が作れるから。でもキャラがいないと成立しない作品・シリーズならキャラの勇退と一緒に幕を引くべきなんじゃないかとも思う。特にこのシリーズはあの2人のキャラがいないとダメだとも思うし。その幕引きになる作品が産みの親のキャメロン製作で(願わくば監督して欲しかったけど)引導を渡すのもいいんじゃないかな…なんて思ったりもします。もし仮にやるなら練りに練りに練りに練りまくった脚本でNetflixあたりで丁寧にドラマにするか、個別のキャラのサイドストーリーにするか。もちろんキャメロン監修とかで。ぼくはたぶん観ちゃう。


最後にあとひとつ。これはある意味”クレーム”みたいなもんです。

『Come with me if you want to live』

なんでこの台詞言わせなかった。なんでフレーズ変えた。アホけ。今作はグレースに近い台詞を言わせたけどなんでまんま言わせないかなぁ。正史の続編ならそのまんま使えよ。


◎(おそらくラストになるであろうシリーズ完結(勝手な決めつけ)への弔いと復活してくれたジェームズ・キャメロンに敬意を表して)(てか、普通におもしろかったし好きです)

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勝92

分19

負7

3つあるシリーズでなんやかんや1番蔑ろにされるわ続編の企画は頓挫するわで不遇なのに神エンディングな映画のお話。

117【アメイジングスパイダーマン2】'14の作品で所謂リブート版の続編。個人的にスパイダーマンシリーズはこの〈アンドリュー・ピーター・ガーフィールド・パーカー〉シリーズが1番好き。初代のサムライミ版はただの尻軽MJが迷惑かけるだけのとてもトホホな内容やし、たぶん1番人気のある〈トム・ピーター・ホランド・パーカー〉版はあんま観たことない。ピーター・パーカー像に1番近いのはトム・ホランドのような気もしますけどね。たぶん個人的に《アメイジング》シリーズが好き過ぎて勝手に満腹感を感じての食わず嫌いなんやと思います。それに加えて、なんしかこの《アメイジング》シリーズはヒロインが大好きなエマ・ストーンなので。前作の[アメイジングスパイダーマン]を観た時にビビりました。かわい過ぎて。一目惚れ。あと、エレクトロ役のジェイミー・フォックス([ステルス]、[Ray/レイ]、[マイアミ・バイス])も好きなんですよね。監督はマーク・ウェブでなんとB'zの[今夜月の見える丘に]のPVを撮った人。

ピーターの両親の亡くし方を『あれ?こんなんやったっけ?』と思ったけどバットマンブルース・ウェインとごっちゃになってました。冒頭のアレクセイとのカーチェイスでスパイディーが荷台でプルトニウムを集めてる時に車が細い路地に入ったシーンで作業員らしき2人が暴走する車が押し集めたゴミとかに巻き込まれて壁にぶち当たるんやけどあれはCGなのか(CGじゃないと無理じゃねぇか?)ってくらい心配する程リアルな映像でビビった。観直してみて下さい。絶対にビビります。映像で言えばエレクトロとのシーンはどのシーンもすごいと思う。技術の進化をまざまざと見せつけられてる気がします。古くは[ハムナプトラ/失われた砂漠の都]('99)でイムホテップが巨大な砂嵐に化けたシーンや[T2]のT1000の液体金属、その前なら[ターミネーター]のクライマックスでのT800などなど。CGやストップモーション・アニメーションのすごさに度肝を抜かれて歓喜しながら観たもんですよ。クライマックス前にグェインが発電所に行く行かないで揉めて虚をつかれて車にくっつけられて置いてきぼりを喰らった時に『ピーター!』と言って口を手で押さえたのは、本来なら名前を言っちゃいけないはずの本名を間違えて叫んでNGになるので本気でエマ・ストーンが口を押さえてる…のを監督が気に入ってそのまんま使った…てのはちょっと有名な裏話。

本来は《アメイジング》も3部作、4作目も構想されてたらしい。ただ、興行的に大成功とならなかった事やマーベルの世界観を大きな丼勘定にする(言い方)〈マーベル・シネマティック・ユニバース〉(MCU)構想が立ち上げられて頓挫したという流れ。本来はこの後の続編でMJが出てきたりする予定だったとか。原作ではグェインの死を乗り越えるピーターの成長とかも描かれてるらしいからそーゆー構成やったんでしょうね。

何度も言ってる『完璧なハッピーエンドじゃない終わり方』がこの作品でも遺憾なく発揮されててすごくお気に入り。原作でグェインはグリーンゴブリンとの闘いで命を落としたらしい。だからそこは忠実なんでしょうね。最終的に「グェインは一命を取り留めた」エンディングなら終わり方の印象は全然違う(そもそもエンディングが変わる)。あのシナリオだからこそあのエンディングが活きてくるんだと思う。それに個人的にはあのバッドエンドを含んだ流れがたまらなく好物です。

屈指の美しいエンディング映画やと思う。大好きな神作[ダイハード]のエンディングが人類映画史No,1やってのは譲らないけど、[ワイルド・スピード/SKY MISSION]のエンディングと並んで匹敵するくらいいいエンディング。泣いちゃう。かっこよすぎて。


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勝91

分19

負7

年末年始に結構観たから弾の補充はそこそこできたけど単発リリースになるとここに書く事が枯渇しちゃうんではないかと危惧し始めました。

116【ダイハード4.0】[3]と連続で深夜に放送してたんで(結局円盤で観直すんですが)。'07のシリーズ4作目。個人的にはすごく好き([1][2]の次に好き)なんですけどあんま評判は良くないみたい。まぁなんとなくわかるけど。原題はLive Free or Die Hardニューハンプシャー州の標語「Live Free or Die」(自由に生きるか、さもなくば死を)に由来する…そうです(Wikiより)。監督はリブート版[トータル・リコール]('12)を監督したレン・ワイズマン。相棒のマット役のジャスティン・ロングアダム・ドライバー(SW epⅦ〜Ⅸのカイロ・レン)がごっちゃになってどっちがどっちかわからないと思ってたりした。今作は娘のルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド、[遊星からの物体X/ファーストコンタクト])がキーパーソンになってて次作の[ダイハード・ラストデイ]では息子のジャック(ジェイ・コートニー、[ターミネーター:新起動/ジェニシス]のカイル・リース、[スーサイド・スクワッド]のキャプテン・ブーメラン)が相棒になるという流れ。娘が勝気(父親譲り)ですぐ手が出る性格(母親譲り)とか両親のいいトコ(悪いトコ?)を受け継いでるキャラ設定は上手くできてる。

ドアタマの20thCentury-Foxのロゴからイヂってくるのは好きです。遊んでる感が。冒頭の爆破のスイッチになるのがスケルトンのT-800だったり「デジタル世代の”ジェダイ”」とかちょっと嬉しくなるネタでまんまとクスッとしますね。娘(ルーシー)に「ジョン!」と名前を呼び捨てにされて『その呼び方はやめろ』と言い返すのは[アルマゲドン]で同じやりとりしてましたね。あと、FBI捜査官としてシリーズ通して3人目のジョンソンが出てきたのはたぶんシリーズファンへのサービス。そもそも、1作目であんなちっちゃかったルーシーを大人にして再登場させてくれてるのもサービスのひとつやと思ってる。ただ、マクレーンがヘリで飛ぶというのに違和感しかないし自分で操縦するとかちょっと設定を変え過ぎなんじゃないかな、と。どうせ飛ぶなら嫌がってるのをマットが『シュミレーターで経験ある』と言いくるめるか騙すかして操縦してマクレーンが横で愚痴を言ってる方がよかった気もする(まぁ非常時とはいえネットヲタクにヘリを操縦させるのもどうかとは思うけど)。使う銃が変わったり作中で乗る車が昔の車ばかりじゃなく最新装備の車になったりと時代を反映してる中でマクレーンだけは苦手を克服したりするアップデートをできてない…って方が良かったんじゃないか、と。

今作の敵ボスはちょっとパンチが弱いというかスキルと怖さが釣り合ってないというか。メンタルがブレブレの弱弱に見えちゃうのよね。このシリーズの悪役はクールでエレガントで余裕綽々で上からマクレーンを蹂躙して欲しいの。たぶんシリーズ通して1番頼りなく見える。カリスマ性も皆無。やろうとしてる事ややってる事はとんでもないんやろうけど。[1]のハンス、[2]のスチュアート、[3]のサイモンがほぼ理想の悪役だったから余計に。その敵ボス・ガブリエルの恋人で仲間のマイ・リン(マクレーン曰く「すぐ人を蹴る女」)は[M:i:3]でランボルギーニを爆破したゼーン・リー役のマギー・Q。部下の1人でパルクール使いの『ハムスター野郎!』ランド(シリル・ラファエリ。ガチのスタントマンであり俳優)がとてもいい味出してるキャラ。あと、後半に出てくるワーロックのキャラが良いから使い方がなんかもったいない。こっちがマクレーンの相棒で《アナログ親父&ガチヲタク》のコンビでもおもしろかった気もする(画ヅラの問題はあるでしょうが)。

ラストの決着の付け方が好きなんですよね。味方ごと撃つ、人質ごと撃つ、そんな機転であっと驚かせた主人公はいたけど《自分》のパターンは初めて観た気がする(しれっとラスト言っちゃう)。とてもマクレーンぽい気もするし。ただ、途中で戦闘機が出てきた時は映画館でちょっと引き笑いしたけどまぁこのシリーズならやっちゃうわなとも思った。宇宙行かないだけまだマシかな、と。今作からCGが盛り盛りに使われてるから派手さやスケールはデカくなってるけど若干のtoo much感は正直なところある。『なんでもありになっちゃうやん』というか。前作までの脚本・プロットがほぼ完璧な出来やったから余計にパワープレイ感がなくはない。ただの〈おもしろいアクションエンタメ映画〉になっちゃってるのもぶっちゃけ否めない。でもおもしろいんですよ。アイデア自体はいいんです。トンネルでのクラッシュシーンや送電所のシークエンスとか。シリーズ通してのファンなので補正かかってるけどね。ただ、好きな立場から敢えて言うなら『ダイハードの冠要らなくないか?』

あと、[3]でも書いたけど《見せかけて》のトリックがなくて(なくはないけど)そこが1番の失念点でネックの作品(まぁ敵ボスもネックっちゃあネック)。それが理由でステレオタイプの〈アクション映画〉になっちゃう。そこが評価が良くない最たる理由やと思う。脚本、伏線、その回収の秀逸さがこのシリーズがおもしろい理由でもあると思うし。展開がちょっとフラットになっちゃってる。フラットというか"薄っぺらい"。それ以外は当時の考えれる最新の〈テロ〉を描いててリアルなんじゃないかなと思う(現実味があるかどーかは別にして)し、素材としての目の付け処はいいと思う。でもやっぱり1番の問題は《脚本》かなぁ。

ルーシーの鼻っ柱の強さや頭の回転の速さは観応えもあるので製作側が安直な考え方なら親父の跡を継いで娘版を作るという血迷った考えになってもおかしくはないけどそれをしていないのはちょっとした救い。マクレーン主役作品がもう作れないし、ネタに困ってこれからやる危険性もゼロではないけど。でもキャラや俳優に魅力があるのでダメ元でNetflixさんあたりが試しにドラマでも作ってくれたらたぶんぼくは観る。おもしろいかどうかは別の話やしよっぽどの駄作じゃなければ文句言わない。敵に拘束されてる時にホルスターの銃で足を撃ち抜くのを親子揃ってやった時は『(親子関係を)上手いこと使うなぁ』とニヤけました。

あと、マクレーンが今作からタバコやめてるのがとても残念。


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勝90

分19

負7

ここから新年明けての内容になりますので『おめでとうございます。今年もどうぞよしなにお付き合い下さい』と言うタイミングでもないようなギリギリ間に合ってるような(間に合ってない)

115【ダイハード3】正月早々夜中に地上波で放送してたので大好きなシリーズやから当たり前のように観た…けど途中から結局円盤で観た。'95のシリーズ3作目。原題は[Die Hard:With a Vengeance]。『Vengeance』は『復讐』。この意味はちゃんと1作目とも繋がってる。前作[ダイハード2]が'90年なので5年の間隔(ちなみに[ダイハード]〜[2]の間隔は2年)で[2]から話が続いてる(なんなら[1]から続いてるし今作はそこがキーポイント)。監督は1作目のジョン・マクティアナンが復活。

1作目は〈高層ビル〉、2作目は〈空港〉というスリリングなクローズドプロットだったのに対して今作はニューヨークの街全体が舞台。1作目は無線で繋がったパウエル、2作目は空港職員(バーンズであったりアーヴィンであったり)と間接的な協力者がいたけどベースは孤軍奮闘。でも今作(正しくは今作以降)は具体的なパートナーが加わってる。その今作でのもう1人の主役のゼウスがサミュエル・L・ジャクソン。最初観た時は『マクレーンの魅力を半分持ってった』と思ったりしたけど何回か観てると逆に魅力をカサ増ししてくれてるとも思えるようになった。だから最初は今作に対する評価はあまり良くなかったです。何回か観た今では好きですけど。敵役のサイモン(ジェレミー・アイアンズ)が1作目のハンスを超えるくらいカッコイイ。そしてとてもエレガント。ちなみにDCバットマンの執事アルフレッド役の人。弟(ハンス)はドイツ訛りの台詞でしたけど兄貴は若干の英国訛りの台詞(ドイツ出身なのでドイツ訛りも混ざってますが)(2人とも英国の俳優です)。機会があれば字幕版で台詞を聞いてみて下さい。色っぽくて品があります。

このシリーズのキモは伏線の見事さと《見せかける》トリックの秀逸だと思うわけです。1作目がテロと"見せかけて"金庫強盗、2作目が味方だと"見せかけて"空砲を使った敵の仲間、今作もマクレーンへの私怨と"見せかけて”金塊の強奪。その脚本が見事。一つ一つの事案が繋がってるのもものすごく綺麗。最初の爆発は威嚇の意味があって地下鉄爆破もちゃんと意味がある。上手いことミスリードしてくれる([2]は派手さに振り過ぎてちょっとこの点が雑だったけど)。次作からはその辺がなくなって(なくなってはないけど)シンプルになっちゃうのよね。

元々はシージャックのストーリー(①がビル(陸)、②が空港(空)となれば③が海になるのはそりゃそうかと)になる予定が変更になってその浮いた脚本が[スピード2]になったのはちょっと有名な話。劇中の『Simon says』の言葉遊びはあまり日本では(ぼくだけ?)馴染みがないのでちょっと残念というか知ってればもっと楽しめた気はする。

ちなみに今作は奥さんのホーリーもTVレポーターのソーンバーグも最初の相棒のパウエルも出てこない。そん代わりに署の仲間が活躍します。特にチャーリー。トンネルの中でサイモンが荷台の130億ドルの金塊でマクレーンを買収しようとして断られますがその後の放水から逃げるマクレーンがダンプをターンさせる時に荷台は空っぽになってます。

マクレーンは腕時計の文字盤を内側にしてるんですよね。所謂、女の人が多くするつけ方。過去に山登りが好きで好んでこのつけ方をしてる人がいました。「色んな作業をしてる時に同時に時計を見るには内側の方が見やすい」とか「外側に文字盤があると余計なトコロにぶつけてしまう」とか聞いたことあります。普通に立ったり歩いたりする際も外側の文字盤を見るより内側を見る方が腕を捻るアクションがひとつ省かれるのも確か。だからもしかしたらマクレーンも銃を構えながらでも時計が見れるからこのつけ方をしてるのかもしれないですね。まぁ1作目から同じつけ方なのでただ単にブルース・ウィリスのつけ方なのかもしれんけど。

ジョンは今作までベレッタを使ってるけど次作の[ダイハード4.0]('07)ではSIGに変わってる。米国軍の正式採用銃がベレッタからSIGに引き継がれたのが'17なのでそれよりだいぶ早い。銃繋がりで言うと、今作のクライマックスでマクレーンの射撃の腕前がすごいような描写がされてるけど、これは1作目の原案になってる小説で《射撃名手の私立探偵》と描かれてる主人公の名残なのかと個人的には思ったりします。

 


1作目と2作目は舞台がクリスマスなので毎年クリスマスに観てるけど今作は真夏なのでなかなか続けて観る事がないから今回の地上波放映のきっかけはちょっと嬉しい。やっぱりこのシリーズはおもしろい。大好き。

'24で1本目の映画。


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勝89

分19

負7