髭日記

アメブロからのお引越し。

ボッコボコに打たれたピッチャーの継投に満を持して誰もが信頼できるはずのレジェンドが登板したけど期待されるような完璧な抑えができずにちょっと自責点がついちゃったみたいな作品のお話(『敗戦処理』だなんて言ってません)

126【プロメテウス】(Prometheus)(初)/'12年の作品で[エイリアン]の監督リドリー・スコットによる第1作目の前日譚でシリーズ通しての5作目。ところどころ観た記憶があるシーンはあるけどちゃんと通して観るのは今回のWOWOWの"シリーズ一挙放送"がはじめまして。

難しい。『わかりにくい』と言うべきか。一回観ただけでは『?』が多い。そもそも今作単体で回収されてない謎も多い。「続編ありき」だとしてもちょいとばかり風呂敷を拡げ過ぎてないかと思っちゃう。物語は1作目('79)をトレースするかのようなオーソドックスな(ベタな)展開。それを美しいビジュアルで丁寧に見せてくれている感じ。登場人物も企業側の人間、アンドロイドと1作目に通じる(というかシリーズ通して)キャラがいて、シャーリーズ・セロン演じるヴィッカーズの凛とした佇まいと所作やデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)のアンドロイドとしての少し無機質な感じとかはとても好き。シャーリーズさんは元々は主人公のエリザベス・ショウのオファーがあったけど[怒りのデスロード]と重なって断ったらしい。んで、[マッドマックス]の方が延期になってしまって逆オファーしたらヴィッカーズなら空いてるという事で引き受けたとか。セロンさん、表情によってはすごくかわいく"女の子"みたいに見える時ある。37歳(公開当時)には見えん。最期は失笑しそうなお粗末でしたが。おそらく観た人全てが『横!横!』って画面に向かって総ツッコミしてるんじゃないですかね。モヒカンの破天荒な学者のファイフィールドを演じたショーン・ハリスは[ミッション:インポッシブル]シリーズのソロモン・レーン役の人。喋り方に癖があるのですぐにわかった。好きな俳優さんのイドリス・エルバ([ダークタワー][ワイスピ・スーパーコンボ])がヤネック船長役で出てる。

プロメテウス号の内観が過去作の宇宙船の貨物船や大型艦船の無骨な感じと違いS•Wのデススター感というか(前作の実験宇宙船オーリガもこっち寄り)スタイリッシュで豪華というか。外観はすごくカッコよくて好きです。個人的なツボはコクピットのガラス(フロントガラス的なガラスの事ね)にシャッターのようなシールドがついてるのが細かくてリアルでいいし、わざわざ惑星LV-223の到着前にそれを開く描写を入れるのもいい。劇中の登場人物たちの行動やドタバタがちょっとナンセンス寄りな気もするけど、まぁそれはシナリオを進めるには必要な演出効果でもあるし(元も子もない)、あんま野暮な事は言わないし冷めた目でツッコむのはスクリーンや画面のこっち側の人間の観点であって極限状態に置かれた人の行動として考えるとそこまで違和感もなくはない(ないワケではない)。犠牲になる乗組員の末路がバラバラなのは寄生された方法が違うからという認識でいいのかしら(凶暴性と身体能力が増す描写はちょっと理由がわからないけど)。その辺も〈フェイスハガー→チェストバスター〉のオリジナルの流れに捉われて観てると『?』てなっちゃう。そーゆーのも含めてシリーズ作品のオールドファンからするとちょっと違う方向に進んでっちゃった感もなくはない。てか、正直ちょっとある。でも[4]よりはマシやと思う。あと『前日譚』(?)だけあって原点(1作目)に寄っていく過程は観ていてワクワクする。スペースジョッキー(エンジニア)が座るあの座席が出てきた時とアノ姿になった時はニヤけちゃいましたね。クライマックスで自分が乗ってない宇宙船にカミカゼアタックを提案するのってかなり鬼無茶ブリですよね。そんで自分が生き残るから余計に鬼畜感ある。最初、ヴィッカーズを脱出ポッドで射出した際に彼女の住居モジュールも切り離したのが例の生物を特攻に巻き込まないように(結果的に保護するカタチ)したのかと疑ったけど、ただ単に脱出した後の彼女の事を思い遣ったヤネック船長の計らいなのかと納得した(たぶん)。ウェイランド社から「保護する」事をインプットされてたプロメテウス号のプログラムなのかもしれんけど、これはただの邪推でしょうかね。エンディングは『それでいいの?』て感じはした。かなり虚をつかれたというか『なんやそれ』って素で声に出た。なかなかお見かけしない稀なトリッキーなオチですな。エリザベスの言ってる事はわかるけど。あと、あのイカの化け物は結局フェイスハガーの祖先って事でいいのかね?

これは個人的な見解なんですけど…。[SW]もepⅣ〜Ⅵの後に遡ってepⅠ〜Ⅲをやったでしょ。その時も起きた現象で「時代が戻るのに技術が進歩してる」とか「昔の方が優れてる」的な変なパラドックスみたいな違和感。製作してる年代の技術が進歩・発展してるからそりゃ当然イイものや超えるモノは作れますよね。でもそのベクトルと作品の中の時系列のベクトルが合わない。向かう方向が「過去」で逆になってるから。撮影技術も然り。時系列的に過去の作品が技術で超えてくるとともすればオリジナルが過小評価される弊害も起きちゃう。『ショボく見える』とまで蔑んだ言い方はしないけど。難しいですよね。SFは特に諸々の技術の進化が如実に表れるジャンルやと思うし。

一応、形式上では『前日譚』なんですよね。あくまでも。『続編』ではない。タイトルに《エイリアン》を入れてないのもそーゆー事なんでしょうね。「《エイリアン》は'76年の1作目から始まるやで」っていう作り手の拘りなのかな、と。知らんけど。全編を通して壮大な美しい映像、デザインを堪能できる物語の着地点のぼんやりわかっているスケールのデカい後出しジャンケン(いい意味で)。そんな作品。嫌いではないです。「趣味か?」と言われるとたぶん答えは『NO』ですけど。観る前は〈前日譚〉と聞いてたからそのつもりで観たけどなんか〈前日譚〉とも少し違う気はするし、個人的には《人類の起源》とかの大風呂敷より《エイリアンの出生起源》の方が〈前日譚〉としてはしっくりきたし風呂敷も上手く結べるような気はしますけどね。

ただ、どーしてもオープニングの意味が全くわからなかった。なんか大事なキーポイントを観逃したのかと思った。わからな過ぎてちょっと調べたら公式HPに書いてあるんですって。『遥か太古の地球を訪れた宇宙人が…(略)…これにより人類の起源となる新型遺伝子が誕生した』ですと。そんなん観ただけじゃわからんて。地球やと思わんて。舞台のLV-223て思うやん。てか、それって今作のキモの『人類誕生の謎』の事じゃないの?オープニングで答え出てしもてるやん。

 


○(ギリギリ○。シリーズファンとして。ほとんど△)

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勝99

分20

負7