髭日記

アメブロからのお引越し。

賛否両論の"否"の話をしながら絶賛するという支離滅裂な感想のお話

118【ターミネーター:ニュー・フェイト】(原題 Terminator: Dark Fate)(初)/'19年の[T2]('91)の純粋な続編。所謂《正史》。なんせ1作目の[ターミネーター]と2作目の[T2]を監督したジェームズ・キャメロンが製作に携わってる(3〜5は「原作・キャラクター創造」のみ)。時間軸は[3]('03)、[4]('09)、[新起動/ジェニシス]('15)、TVドラマの[サラ・コナー クロニクルズ]('08)とかは別ということになってるらしい。シリーズ第6作目(ドラマ[SCC]はノーカンとして)にあたる作品で監督は[デッドプール]('16)を撮ったティム・ミラー。今回アマプラで観たんやけど20世紀FOXがディズニーの魔の手に堕ちた(買収されただけです)のでアマプラで観るのは半ば諦めてたし観れるとは思ってなかった。タイトルってなんでオリジナルそのまんま使わなかったんやろうか。『〈ダーク〉やとイメージ暗い』とか作品関係ないところで作品関係ない人が作品関係ない会議して決めたんかな。センスないわ。

おそらくこの作品に集まる賛否両論の"否"の部分の大半を占めてるポイントを予想してみます。《ジョンの扱い》なんじゃないでしょうか。ダメでしょ。早々にあんな退場させちゃ。そりゃ納得しませんよ、ほとんどの人は。あくまでもターミネーター世界線では〈ヒーロー=ジョン・コナー〉であって希望であり光なんです(あくまでも〈英雄〉という話で〈主人公〉を論じてるワケではない)。その役割はT-800なんかじゃないんですよ。[3]で腑抜けに描くという悪手を打って期待を裏切って挙げ句の果てに[新起動]では敵に回るという最悪手を打った。だから「駄作」とか言われるんですよ。(その点、世間では全体的な評価が低い[4]ではジョンは指導者ではなく兵士として描かれてはいるけどちゃんと〈ヒーロー〉であり希望だった。だからぼくは[4]が好きなんです)。ただ、今回のあのジョンへの仕打ちがキャメロンの目の届かない場所ではなく〈製作〉下で行われた事が〈救い〉なのか逆に〈無慈悲〉なのか。どこの誰だかわからない監督にキャメロン関係ないトコロで同じ事をされたらたぶん倍以上にキレ散らかすと思う。監督のティム・ミラー曰く『サラの悲劇性を引き立てる起爆剤』があのジョンの扱いなんだと。わからんでもない。いや、なんならわかる。でも《正史の続編》を謳った作品で前作([T2])で皆が命を懸けて守った希望を蔑ろにしてしまった。それも冒頭で。[ターミネーター]シリーズの主役はジョン・コナーじゃないのはなんとなくわかってます。主役はサラであって同じくらい"ターミネーター"なんでしょうよ。カイルもジョンもあくまでも〈主役〉ではないと思う。ただ、物語や世界線を構築するにあたって欠けちゃいけないピースなのよ。確かにエドワード・ファーロングのキャスティングがネックだったり使い物にならなかったり(言い方)と難問はあったとは思いますがね。加えて中年のジョンを登場させるというのもリスクは伴う。きっとみんなの〈ジョン〉は[T2]の時のファーロング像なんでしょうから。別の俳優に演じさせるなりしてもおそらくそこに《否》は集中したでしょうよ。そことの天秤に掛けた結果があの扱いに落ち着いた苦肉の策なのかもしれませんし、「フェードアウトさせるならあのジョンの姿のままで」というキャメロンの親心に近しい思い入れみたいなのがあったのかもしれない(逆にそうであって欲しいとも思う)。冒頭で観ている人の期待や想像を裏切る事には成功したと思うしあれ以上のやり方はたぶんない。でも、それでも《悪手》とまでは言わなくても《良手》だとは思わない…のがほとんどの人の”否"の原因かと。ぼくも最初はそう思いました。でも最後まで観たら少し変わった。実は"上手い"んですよ(後で理由書きます)。

まぁ脚本はぶっちゃけると限りなく微妙ではありました。劇的に魅せる展開ではありましたけど、やってる内容はほぼ[T2]でしたし。そこもおそらく同じくらいの"否"が集まるポイントでしょうね。言いたい事はわかります。悪く言えば「焼き回し」。ただこの《トレース》がキャメロンが続編としてやりたかった事(作らせたかった事)、[T2]を超えなくても大事に思ってる事(もちろん超える気満々で作ったんでしょうが)なんじゃないかな、と。敢えて大舵を切らなかった(ポジティブに変換してます)。そこを考えた上で観ると単なる"焼き回し"なんかじゃないよね、と。SW愛が溢れてるJ.J.エイブラムスがep.Ⅶをほぼep.Ⅳのトレースにしたのを受け入れた人間からしたらまぁわからんでもない。そう思った理由を書きます。〈スカイネット〉を筋から外して〈リージョン〉に置き換えた事で同じ理由で抹殺指令が出てもターゲットがサラではなくダニーになるというタイムラインをもうひとつ作ったのは意味がわかると秀逸なんですよ。強引ですけどね。とても上手い。相手がスカイネットなら延々とサラが狙われてたと解釈していいと思う。それに、そのタイムラインならジョンの存在は不要になる。ジョンはリージョンに関与しないから。そこは辻褄は合う。”上手い"でしょ。あと、スカイネットが存在しない未来ならT-800を束縛するモノもターミネーターとしてのアイデンティティーもなくなる。自由になるし自由にできる。それも辻褄が合う。上手いでしょ。ただそのタイムラインの乱立をやっちゃうと次から次へと新しく次の〈ジョン〉が生まれてキリがなくなっちゃうという畏怖とこのパターンが初見じゃないからどうしても展開の読めないワクワクさは減っちゃう。それはシリーズ物なら仕方ないと言えば仕方ないけど。だからなのか転送されてきた瞬間に〈善〉か〈悪〉の予想がついちゃう。そこはなんかひと工夫してくれないと。でも、シリーズ初見で観た人はワクワクしたんじゃないかな。だって展開がおもしろいもん。未来から機械が殺しにやってくるなんて。設定がもうおもしろいですやん。[T1]、[T2]でワクワクしましたやん。

作品自体は個人的には好きですよ。アクションやドンパチが好きですし。シリーズ前作([ターミネーター:新起動/ジェニシス])に比べたらずっとおもしろい。ずっと。映像も観応えあるし魅せ場がテンポ良く続くのもいい。何回も観れると思う。でもこのシリーズはそれだけじゃないでしょ…という気持ちもある。勝手にハードルが上がってるというか。もっと求めるモノが大きいんですよね。シリーズの襷([T1]、[T2]の襷)を受け繋いでるから。ただのドンパチド派手エンタメアクションなら他の作品で十分観れるんです。せっかくのこのシリーズの世界感やこのシリーズ独特のプロットがあるのにそれを上手く使いこなせてない気がして歯痒い。なんやかんや言うても[3]、[ジェネシス]よりはよっぽど上手くできてるけど。まぁシナリオ的にはどうしてもデジャヴは生じますわな(変則的な事をした[T4]はそれはそれで叩かれるし)。あと『続編』という謳い文句が呪縛になってる気もする。純粋な『続編』というより少し『リブート』も混ざっちゃってるかな、と。だから融通の効かない人が『続編?』とそこを突くんですよね。[3]以降の作品のストレスも重なって。期待され過ぎちゃって。完成し過ぎてたんですよ。[T1]と[T2]が。

シリーズを追っかけてるファンにはニヤリとするシーンがサービスで何個かありましたね。ドアタマがあのサラの録画データから始まるのはよかった。否が応でもテンション上がる(その流れで『ジョン!ジョン?』やから尚更『はぁ?』になるというリバウンド)。サラを助けようと無茶をしたダニーがグレイスに嗜められるのも[T2]の精神病院から逃げ出した車中でサラに叱られたジョンのトレース。あと、カールが犬に懐かれてる設定も知ってれば彼の変化を納得できる描写。 上手く使ってる。Rev9の無機質さも上手く演じて表現できてると思います。ただ、[T2]のT1000(ロバート・パトリック)の”完全な無機質”が如何にすごく如何に完成されてたかが改めてわかる。あと、グレイス(マッケンジー・デイヴィス)がいい。キャラとしても素材としても。十分に加点の材料です。ぼく個人としては。〈ショートヘア+デカイ+強い〉。とても癖をくすぐりまくる女性キャラですね。ぼく個人としては。たまんないです。ぼく個人としては。初っ端のショットガン鬼連射から魅せてくれる。頭を撃って動きを止めてそのまんま勢いで全弾撃ち込むのではなくて3発目くらいで銃を弾き飛ばして相手を無効化して残りを撃ち込んでるのも細かくて好き。あの3発目があるのとないのとでグレースの戦闘能力が付け焼き刃じゃない事がわかる。一瞬のシーンだけどとても上手い描写やと思う。

サラをリンダ・ハミルトンで復活させたのはぼくはファインプレーやと思ってる。ここにも"否"はあるんでしょうけどね。ぼくは全然"否"だと思わない。〈世捨て人〉みたいでイリーガルな雰囲気、カッコイイと思いましたよ。実際に歳を重ねたハミルトンが演じる意味は大きいと思う。事実、いい歳の取り方をしてござると思うし。まぁでも他の役がやりにくいでしょうね。ただでさえサラ役の印象が強かったのに今作のサラ復帰でそれに拍車をかけた。それだけの名刺役があるのは幸せな事なんでしょうけど。[T1]のレストランのウェイトレスが28歳(実年齢)(役は大学生)、[T2]の女戦士が35歳(役設定は29歳)で今作が63歳。ひとりの女優さんの生涯を見せてもらってると言うと少し大袈裟かな。

T-800に関しては…ねぇ…。[T2]の時にも書いたけど、あの《サムズアップ》が好きじゃない(感動はしますよ。でも好きか嫌いかは別)ので今作の"人間らしさ"もなんか蛇足感というか。作品に溶け込ませる為にあの設定なんでしょうけど。でも今回も"人間らしさ"を学習した彼はある意味トレードマークだったサングラスをしない(正しくは、ドアタマのグアテマラのシーンではしてます。この時は殺人マシーンなので)。この〈する/しない〉の描写のワケ方は[T2]からちゃんと繋がってる。そこはよかった。あと、カールがグレースにメールを送った理由を問われて答えた時のサラの『That's "HOW", not "WHY".』(字幕では)『それは現象。理由じゃない』って台詞が教科書に載ってない活きた英語っぽくてすごく好きでしたね。

サラもT-800もおそらく今作が最後なんじゃないでしょうかね(そもそもこのシリーズが今作で最後になるという危惧も)。シリーズ作品はこの先いくらでも作れるでしょうけどね。作ろうと思えば。だって前述した”新しいタイムライン"を作れば護るべき〈ジョン〉が作れるから。でもキャラがいないと成立しない作品・シリーズならキャラの勇退と一緒に幕を引くべきなんじゃないかとも思う。特にこのシリーズはあの2人のキャラがいないとダメだとも思うし。その幕引きになる作品が産みの親のキャメロン製作で(願わくば監督して欲しかったけど)引導を渡すのもいいんじゃないかな…なんて思ったりもします。もし仮にやるなら練りに練りに練りに練りまくった脚本でNetflixあたりで丁寧にドラマにするか、個別のキャラのサイドストーリーにするか。もちろんキャメロン監修とかで。ぼくはたぶん観ちゃう。


最後にあとひとつ。これはある意味”クレーム”みたいなもんです。

Come with me if you want to live』

なんでこの台詞言わせなかった。なんでフレーズ変えた。アホけ。今作はグレースに近い台詞を言わせたけどなんでまんま言わせないかなぁ。正史の続編ならそのまんま使えよ。


◎(おそらくラストになるであろうシリーズ完結(勝手な決めつけ)への弔いと復活してくれたジェームズ・キャメロンに敬意を表して)(てか、普通におもしろかったし好きです)

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勝92

分19

負7