髭日記

アメブロからのお引越し。

ホントは他の作品を投下しようと思って下書きにまとめてたんですけどちょっとおもしろくてガーーーッと書いちゃった作品のお話。

119【BLUE GIANT】(初)/WOWOWにて。'23の作品。映画館で何回か予告編流れてました。原作未読で予告編を観たことがあるくらいの情報量で観たんですが…。ドエライ作品でした。劇場で観たかった。TV画面で観てもおもしろかった。でも劇場で…というか極上の音響環境で観たら何倍、何十倍もおもしろいと思うし、なんならそれがこの作品の本来の完成形なんじゃないかなとすら思った。劇場で観る事ができた人をちょっと羨ましくも思っちゃう。

かなり話題になってた作品ですけど、『そりゃ話題になるわ』て作品でした。聴いてるだけでも気持ちいいです。サントラ欲しくなりますね。オリジナルのスコアもカッケェんですよ。昔にほんの少しJAZZとかも聴いたりしてたんで音楽がとても心地よく聴けました。JAZZってもっとこうムーディーでおしゃれな雰囲気というか…カウンターでお酒を飲みつつ煙草を嗜みながら…みたいなイメージがあったんですけど、こんな〈主人公〉になる要素もあったんですね。音楽に対する素質や知識、経験、悟性がないもんで受け取れるセンスが乏しいのが残念ですけどそれでも十分におもしろかった。カッコイイんですよ。ともすれば陳腐な言い回しになるかもしれない『音が見える』という表現に限りなく近い熱量のある音を浴びる2時間。

ストーリーはなかなかスポ根ライクな熱いお話。2時間の尺に納めるのにだいぶ端折られたりしてるんじゃないかと思うしかなりエンタメに脚色されてるんじゃないかしら(原作読んでないから想像で書いてます)。でもそれがドラマチックでいい。あくまでも主役は〈JAZZ〉であり〈音〉だと思う作品なのでストーリーやキャラに求めすぎる必要はないと思ったりもしますけど、これがなかなかいい感じに盛り上げてくれる。泣いちゃいますよ。あと、出てくる人に悪人がいないんですよね。粋な人ばかり。天沼さんが最初ちょっと憎まれ役なだけで。『君の成長するドラムを聴きにきているんだ』の豆腐屋の金田さん(竹中直人さんのイメージで観てました)の台詞が1番グッときた(泣いた)けど、『10%』の赤鼻のサラリーマンもガッツリ心を奪いましたね。クライマックスのSO BLUEにも聴きに来てて嬉しくなりました。鼻っ柱をへし折られた雪祈が『そこまで言うか』の後に『そこまで言ってくれるか』と付け足すのがイイ。一言目だけなら腐って挫折に向かうのかもしれないけど二言目を言葉にできるというのは雪祈はちゃんと平さんの言葉の真意をわかってるって描写やと思うし、そこからの成長がたまらない。最初の頃の雪祈なら1人だけ誘われたとしても2人に断りを入れずに代理を受けてたと思うんですよね。なにかしらの理由や屁理屈をつけて。でもそれをちゃんと2人に先に打ち明けた。そしてそれを快く背中を押す2人。イイ。そのステージで自分の殻を自分で打ち破った雪祈。イイ。そしてクライマックスへ。

上京して演奏場所を探してる時のオープニングクレジットがとてもセンス良かった。なんか海外の映画みたい。冒頭の降り積もる雪の描写がとてもキレイでしたね。[スラダン]の雪の描写がすごくキレイでリアルでとても好きなんですけど、あっちは〈神奈川〉の雪でこっちは〈宮城〉の雪でちょっと違う。冬の雪国の雪でした。全編を通して汗や飛沫や涙の描写がちょっとtoo muchというか少し古臭いというかアレな部分はありましたけど。あの表現がなくても(抑えてても)十分に熱量や盛り上がりは描けてたと思いますけどね(CG云々よりもこっちの方が気になった)。まぁ正直、作画は某駿先生のトコや某前前前世シリーズの制作会社には追いついてないと思う。けど負けないくらいの作品に音楽が押し上げてる。

ぼくの中での好きなアニメ映画は[カリオストロの城]と[THE FIRST SLUMDUNK]がぶっちぎりで[風の谷のナウシカ]を加えた3作品がベスト3じゃないかなと思っていて、[逆襲のシャア][天空の城 ラピュタ][紅の豚][もののけ姫]と続くんですけどそれに匹敵するくらいおもしろかったですね。

ただひとつだけどうも腑に落ちないというか疑問に思う事がある。なぜ〈声優〉を使わなかったのか。あの3人の声に不快感や抵抗があるわけでもないし文句があるわけでもない。キャスティングとして失敗してるとか全然思わないし当然炎上なんかもしないでしょう。普通に観れますよ。成立してる。悪口じゃないです。個人的な感覚の問題で作品にも演じた3人にも非はないと思います。でも、ぼく個人としては〈声優〉が演じるJASSの3人ならもっと世界観に没入できたんじゃないかなとは思いましたね。「不快感」や「抵抗」はなかったけどほんの些細な「違和感」はあったので。ただ、そんなのを帳消しにするくらい音楽が良かった。

惹きつけるようなファンタジー要素や派手なエンタメ要素を一切入れず《JAZZ》を題材にして《音》が主役の物語を映像で魅せるってすごい事やと思います。観ながら〈聴く〉映画。それをとんでもない高いレベルで成立させる日本のアニメーションってホントにすごいと思わされました(CGの部分はまぁ敢えて触れません)。正直、あまり期待しなくて「話題作」という偏った印象だけで観たんですけど、とんでもなくおもしろかったです。たぶん今年('24)に観た映画たちを振り返った時に名前が出るくらいの作品です。観てもらえるかどうかは別にして薦めたい作品ですね。


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勝93

分19

負7