髭日記

アメブロからのお引越し。

〜無双父と私のアパッシオナート〜のお話。

121【96時間】(原題:Taken)BS-12で放送してたので久し振りに。主演のリーアム・ニーソンの声が好きなので字幕版で。'08年の仏・米合作の自警団アクションスリラー映画。所謂「ヴィジランテ・ムービーです。[イコライザー]の時に書きましたけど同じジャンルですね。そこにサスペンス味が上手く足されてる。秀作です。リュック・ベッソンが合同脚本で携わってて監督はピエール・モレル。リュック・ベッソンは[トランスポーター]もそうやけど良い素材というか良いアイデアを生みますね。続編とかの育て方があまり上手くない…とまでは言わないけど〈1作目〉のプロットは他と違う角度のおもしろさはあるんじゃないかな(まぁ両方とも"共同"脚本ですけど)。原題の[Taken]は「奪われた=攫われた」という意味でいいと思います。邦題は劇中の会話で出てきた「誘拐事件の被害者が無事でいられると考えられる猶予期間」から。珍しく原題に負けないくらいのなかなかセンスいい秀逸な邦題ですね。リーアムさんの出世作であり代表作と言っていいと思います。おもしろいですよ。円盤も(シリーズ3作)持ってる。

冒頭の誕生日会とボディーガードの仕事でブライアンの自己紹介がちゃんとできてるからスムーズに入り込める。プレゼントを自分で梱包するシーンとか普通なら要らないですよね。でもその数秒のシーンがあるからこの人が意固地なキャラってのがよりよく描写されてる。いいシーンですね。車に避難してきて動揺してるシーラに飲み物で糖分を補給させるシーンとか細かくてリアルで好きでした。肩の抱き方がぎこちないのもいい。

娘が攫われる断末魔の叫び声を聴かされるとか地獄でしかないですよね。耐えられない。そもそも電話越しの娘に『お前も攫われる』なんて言わなきゃならないのもエグい。ただ、その電話に出た相手に投降の選択肢を与えながらも追い詰める言葉を出せる(『◯す』まで言うてますからね)のがすごい。普通は媚びますよ。刺激しないように。この父親は違う。強く言える自信があるから。完全に相手の方が有利な立場でともすれば後手に回るのに。なんなら脅迫される側やのに。主導権を渡さない。強過ぎる。手に職(言い方下手か)あると自信が違いますわ。実際、CIAの元工作員としての経験やスキルで無駄なく追い詰めていく流れは痛快で観ていておもしろいしある意味この作品の魅せ場。ただ、最後に『こいつがマルコだ』っていう決定的な振りがあともうひとつ欲しかったかなとは思いますね。あの台詞が決定的な確信なんでしょうがあそこであの紙を渡す対象を絞り込むあとひとつが。「ヒゲ」や「タトゥー」ではちょっと選択肢が絞りきれてないような気がするんです。そんな人間ばっかりやし(そう見える)。そこでアレでは〈絞りきれた〉描写が足りない(わかりにくい)かな、と。「どこかに大きな傷がある」とかを足しても良かった気はする。それか順番に読ませて最後に『こいつか!』てなるか。あと、このブライアンのスキルが更に遺憾無く発揮されるのは続編の[96時間/リベンジ]です。自身が攫われた時に道中で場所の目印を把握してそれを頼りに追跡するシーン。これは更に見事。名シーン。痺れる。シリーズ通しての屈指のシーンです。

意外とも言えるけど、作中で娘さんは一切「馬鹿」には描かれてないんですよね。浮かれてるだけで。確かに父親に対しての反抗期っぽい描写(まぁ親父の厳しさに辟易してるだけなんでしょうが)はあっても友達がちょっと奔放なだけでキムはそれに振り回されてるだけ、と。だから自業自得の問題を起こすトラブルメーカーじゃないから観ててイライラしないし感情移入もできる。この辺は上手い。ちゃんとあの緊急時でも父の言う通りに情報を伝えたし、続編でもしっかりとアシストする有能さを見せて「さすがこの父親の娘」と思えます。

脚本とプロットがいいんですよね。素晴らしくいい。話の流れが破綻してない。とてもいい脚本。絶妙にリアルさも残してる。テンポもいい。ちゃんとハラハラさせる。悪漢に容赦ない仕打ちするのも観てて爽快。あと、伏線の張り方というか繋げ方が上手い。個人的には名刺の使い方(これは続編でまたおもしろい使われ方します)がすごく好きやったし、ボディーガードの仕事のくだりをエンディングでとても巧く使ってる。いいエンディングです。

リーアムさんの体術や銃の使い方がすごくリアルに見えるんですよね。そこそこの高齢(今作時点で56歳)なのでちょっとモッサリしたり走る速さとかはまぁどうしようもないとしても、身体が大きい(190㌢over)ってのもあると思うけどすごく強そうなんですよ。どこぞの部隊にいた経験があるのかと思っちゃうくらい(ボクシング経験者らしい)。〈魅せるアクション〉じゃないんですよ。やたら飛んだり跳ねたりしない。そんな歳じゃないしそれはそれができる人に任せればいい。ただ、この人のアクションはちゃんと対象者を〈護れるアクション〉なんですよね。だから派手さはないけど無駄がなく強く見える。

続編もおもしろいですよ。お薦めできます(3作目はちょっとばかりグレードダウンしますけど)。


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勝95

分19

負7