142【ジョン・ウィック:パラベラム】(原題:John Wick: Chapter 3 - Parabellum)少し前にWOWOWでジョン・ウィックの最新作[コンセクエンス]が初放映するってんで[1]から順番に放送してたので録画してあった([1][2]も観たけど前に書いたから割愛)。今作はシリーズ3作目にあたります。「パラベラム」はラテン語で「戦争の準備」って意味らしいです。'19の作品で監督はシリーズ通してメガホンを取ってるチャド・スタエルスキ。この人スタントマンらしく[マトリックス]でキアヌのスタント務めたり[クロウ/飛翔伝説]('94)でブランドン・リーの事故後のリーの代役も務めたらしい。
1作目から前作の[チャプター2]と今作(そして次作)まで話がダイレクトに繋がってる。「◯年後」とかじゃなく。それぞれが終わったすぐ後の話(2作目は1作目の数日後で3作目は2作目の終わりのホントの直の続き)になってるんやけど、こんな繋げ方するシリーズって珍しいと思う。続編というかシリーズ全部が1つの話になってるカタチ。だから何年かかけて作った映画がドラマの2話、3話みたいになって繋がっていく。ぶっちゃけ、繋げようと思ったら前作と今作は1本の作品にできるくらい。他にこんな作り方してるシリーズは思いつかない(知らないだけかもしれんけど)。ドラマのエピソードの構成をそれぞれ単体の映画で構築してる。贅沢ですね。なかなかできないですよ。そんな展開だからシリーズとして、作品としてすごく観やすいです。ただ、1作目の痺れるようなカッコイイ復讐のクールさ(それがイイってトコあるじゃないですか)がドンドン派手になって"下品"ってワードは相応しくないかもしれないけど明らかに毛色は変わってる。1作目の持つ重厚なドラマ性は影を潜めてアクション味がより強まってる気はする。悪く言うと、派手さは増してスタイリッシュにはなってるけど薄っぺらくなりつつある。ストーリーは繋がってますよ、勿論。一作毎にちゃんと話は成立してます。エピソードとして1話完結の作り方してる。
冒頭のドクとの絡みはよかったですね。友情と掟(ルール)が上手く混在して描かれてる。自分からジョンに撃つように促す粋なやり方がカッコよかった。それに応えるようになんの躊躇いもなく無慈悲に撃つジョンの粋さ。2人の信頼を無骨に表現してるいい関係性ですよね。その後で逃げ込んだ骨董品店でのシリンダー交換(使いたい弾のサイズが合わなかったからなんでしょうがそのシリンダーのついてたマグナムは使えなかったのか?)はヲタクっぽくて良かったけど1発しか撃たないコスパの悪さにはちょっと笑いました。あと、街中のどこで何をするにしても金貨が有効で「ジョン・ウィック」の名前がタクシーの運転手とかまで知れ渡ってる世界線の設定がなんかカッコイイ。ちょっと[マトリックス]っぽいけど。主席連合の管理部で働く女性たちがゴリッゴリにタトゥー入ってたりしてみんなすげぇパンクでロックなのも地味に好きです。
ぼくは銃を撃つシーンよりもリロードとかのアクションが好きなんですよね(今更)。毎回のように書いてるけど《銃の扱い》がカッコイイ、丁寧な作品が好きなんですよね。ただのドンパチだけじゃなく。もちろん撃つシーンも好きですよ。今作のクライマックスでジョンがショットガンに装填するシーンがチビりそうなくらいカッコよくて惚れ惚れした。マシンガンとかの自動小銃のリロードよりハンドガンのリロードの方がかっこいいし、ハンドガンでもオートよりリボルバーの方がかっこいい。でもそれよりもかっこいいのはポンプアクションのショットガンやと思うんですよね(極めて個人の見解)。あと、倒した敵から弾倉をこまめに奪ってるんですよ。そんでこまめに交換してんの。チープな銃撃シーンの無限弾倉みたいなリアリティーのない設定じゃないの。好きです、こーゆーのをちゃんとしてるの。
今作は前作よりもナイフアクションが増えてます。更に言っちゃうと次作はもっと増えます。刀とか使うし。目を見張るアクションは相変わらずすごいです。でも、何回も繰り返し観たいと思うのはガンアクションなんですよね。CQCや刀でのアクションはそんなに繰り返して観ないなぁ。かっこいいけど。あと、個人的に〈斬り傷〉が苦手なんですよ。撃たれた傷や刺された傷は比較的平気で観れるんやけど〈斬られた傷〉だけは痛くて観てらんない。
もっとちゃんと下調べしたうえで日本の描写をしてもらえませんかね…っていう日本の扱いにはなんかもう慣れちゃって文句言う気も失せつつありますわ。でもさ、どんな作品でも創るにあたって色んなプロットのリアリティだとか破綻しないように整合性って突き詰めるもんですよね。アクションシーンや銃とかの小道具であったり世界観の統一とか。そーゆーとこはちゃんとリサーチして打合せを重ねて辻褄をキレイに合わせて整えるのにさ。何よあのゼロの寿司屋。色々破綻しとるがな。[キル・ビル]の服部半蔵の寿司屋と変わらへんがな。ちゃんと日本を知ってる人に聞くなりちゃんと日本を知ってるスタッフを入れなさいよ。知らんまんまで「なんとなく…」で作りなさんな。てか、知ってるスタッフ止めろよ。現代劇の日本映画でアメリカ人が馬に乗った開拓時代のカウボーイで出てくるか?そーゆー描写ですよ。この辺が10年20年前からほとんど変わらないのはとても遺憾。まぁそんな設定云々よりも、明らかに日本人が演じた方がフィットするような役(日本語喋らしてるからね)やのに日本人俳優がキャスティングされないのは毎回歯痒いですね。[ブレットトレイン]の"木村"然り(木村役のアンドリュー・小路さんを腐す意図はないです)。まぁ百歩譲ってしゃあないとしますよ。台詞の壁とかあるでしょうし。でもそれなら日本語喋らすなや…って思っちゃって。カタコトの英語台詞よりもカタコトの日本語台詞の方が鼻についちゃうんですよ。一気に冷めちゃう。作中への熱も感情移入も。まぁ逆に英語圏の人はカタコト英語台詞に同じ事思ってらっしゃるんでしょうが。知らんけど。文句ついでに言うならクライマックスのゼロの弟子やゼロとの対決はなんなんでしょ。ちっともかっこよさがわからなかった。なんかノロノロしてるし(コレ、今作くらいから特に目立ってきましたよね)。やっぱ大谷さんの言ってたように『憧れちゃダメ』なんですよ。殺し屋同士の闘いに見えない。
たぶん今作で1番描きたかったのはコンチネンタルの聖域指定解除と銃撃バトルであってシャロンたちの反撃なんじゃないかなと思ってます(まぁ主に銃を撃つシャロンを描きたかったと言っても言い過ぎじゃないと思う)。観応えも迫力もありました。演出上ずっと画面が暗かったのとモブスタッフキャラが瞬殺されていくのはちょっともったいなかったけど。まぁ主席連合の襲撃部隊が手強い(装備がハンパない)を際立たせる演出なんでしょうね。でもね、完全武装してるとはいえ1人の敵に弾数使い過ぎじゃないですか、ジョンさん。1発2発づつくらい余分に撃ち込んでる気がしないでもない。個人的には願わくばウィンストンさんの活躍も観たかったなぁと思いました。敵を赤子の手を捻るくらいの優雅でレベチな格闘スキルを一瞬でも挿れて欲しかった。せっかく音楽を流してたんなら踊るように敵を殲滅して欲しかったなぁ。裁定人からの電話を話の途中でぶった切るシーンはよかったです。笑っちゃった。聖域指定解除されて迎え撃つ準備する時の「何が欲しい?」に対する答えの『銃をくれ、どっさりと』は[マトリックス]へのオマージュとして『Guns. Lots of guns』と全く同じ台詞というサービス。あ、あと、馬で市街地を爆走するシーンも撮りたかったんでしょうね。奇抜である意味"映える"シーンやったんかもしれんけど素っ頓狂過ぎてこのシーンだけ浮いて感じましたが。逆に目立っとるがな、と。馬を走らせたインパクトが強すぎて中盤の本来ならかっこいいバイクアクションシーンの印象が薄くなっちゃった。同じ作品に混ぜ込んじゃったから。
このシリーズ、1作目以外は明らかに次に続く前提で作ってるエンディングなんですけど、冷静になって考えてみたらすごい事してますよね。[ワイスピ]のなんかの作品の時にも書いたけど、興行成績や評価で続編の企画とかが簡単に飛ぶようなこのご時世(昔に比べたらそれが更に如実になってると思うので)にものすごく強気な製作陣やと思います(※調べたところ、続編制作のグリーンライトが灯ったのは公開して数ヶ月後だとか。だから「続編ありき(確定という意味)」ではなくて半ば見切り判断なんですよ。それはそれですごい)。
1作目の世界観とクオリティーやまとまりがほぼ完璧やったし〈殺し屋〉の新しいアイコンになるくらいのヒット作になりました。それを繋げた前作と今作はスケールはもちろんアップしてます。ただ、観終わった後の満腹感の"質"が微妙に違う気がします。1作目は至極の単品料理で料理の概念を覆す勢いだったのに対して、前作と今作は「素材は確かに良くなって高級感はあるし食べるメニューも増えた。でもなんか料理としてのグレードとしてはどうなん?」て感じ。豪華な定食みたいな感じ(例え方下手)。おもしろいですよ。観てて楽しい。ただ、悪い言い方すれば〈スピンオフ感〉がどこかに感じちゃうというか。最初に書いた「2話目。3話目」と捉えればトータルの《ジョン・ウィック》の世界観は崩れてないからおもしろいシリーズなんですけどね。
あと最後にもひとつ。ラストの落下はちょっとやり過ぎよ。アニメのレベルでしょ。一気に冷めちゃうわ。
○(シリーズの中では1番△寄りかな)
次は4話目観ます。
勝115
分20
負7